
僕は子供の頃から、乗り物酔いに悩まされてきた。
旅行に行く時に気がかりなのは、自分の乗り物酔いだけだった。
世の中に乗り物酔い検定というものがもしも存在するならば、僕は間違いなく1級だろう。
幼稚園の時は、飛行機で乗り物酔いが起こり、飛行機のトイレでリバースした。
小学校の時は、スキー授業で雪山に行くために乗った30分程度のバス移動で、リバース。
高校の時は、通学のバスで5分ほどで酔い始め、目的地まで乗ることができず、途中下車。
社会人になってからは、JRに乗って30分ほどの移動で、リバース寸前まで追い詰められ、連結部付近でうずくまる。
船ではもちろんリバース確定だ。
そんな超絶酔いやすい体質なのだが、毎回100パーセントの確率で酔うわけではない。
それはなぜなのかについて考えてみたのだが、おそらく精神の力が関係しているのではないかという仮説にたどり着いた。
というのも、実は最近、精神力で乗り物酔いを克服したからだ。

精神力で克服した事例
正月休みに実家から電車で帰ってきた時の話なのだが、電車が大雪の影響で減便していたため、数少ない運行している電車に人々が殺到するという、僕にとって緊急事態が起こっていたのだ。
「座れなかったら終わる。」(座ると酔いを抑えられる、立っていると高確率で酔う。)
僕はすぐに緊急事態宣言を発し、対策を考えた。
対策はこうだ。
できるだけ列の先頭に並び座ることができるよう、前を走る電車と自分が乗る電車の時間差を確認する。
それに基づき改札を通る時間を調整する。
他の人の心理や行動を読み、自分の行動を決める。
このように脳をフル回転させた結果、なんとか列の先頭に並ぶことができたのである。
しかし、電車が到着した瞬間、それらの努力は無駄であったことを知ったのだった…
車内はすでにギュウギュウ詰め状態だったのである。
一瞬絶望しかけたのだが、僕はすぐに気持ちを切り替え、精神力で乗り越えるべく気合を入れ直した。
以前、煉獄さんの教えを実行し、気合で出血を止めた時と同じで自分に残された最後のパワーである精神の力を信じることにしたのだ!
「自分は大丈夫だ!」
言霊の力により気合を入れ、僕は血走った目で人が密集する電車に足を踏み入れた。
「ここからが本当の勝負だ。」
結果、約30分間一緒にいた子どもをほったらかして、精神集中を続けたことで電車酔いとの戦いには勝利した。
これが、精神力で克服した事例だ。
一方で、精神力だけではうまくいかないこともある。

精神力ではどうにもならなかった事例
これもつい最近のことだが、スピリチュアルに寄り気味の自己啓発本を読んでいた時の話だ。
その中でスプーン曲げの話が出てきたところ、突如「なんか、俺もスプーン曲げられる気がするんだけど」と感じたので試すことにした。
いい歳したおっさんがスプーン曲げに挑戦したという、かなりやばいエピソードをここで紹介するのも気が引けるが、結果をお伝えすると、1mmもスプーンは曲がらなかった。
堅すぎた。
他にも少し前なのだが、皮膚が炎症を起こしたことがあり尋常じゃなく痒かったのだが、病院に行かずに気合で乗り切ろうとしたことがあった。
夜も眠れぬほど痒く、それでも気合で3日間は持ちこたえたが、マジで頭がおかしくなりそうであり、ついには精神の限界に達したため病院にかかったところ、薬を塗ったら速攻で治癒した。
様々なところで、ストレスを受けると免疫の働きが弱まり、リラックスしている時には免疫の働きを高めるという話は聞くが、そういった精神力による影響の度合いは、どこかに限界があるに違いないと感じたエピソードだ。
実際に、病気になった人はみんなストレスを受けているわけではないだろうし、ストレスを受けている人が病気になっているとも限らないだろうが、僕は精神の力を信じきっていたわけだ。
「人間この信じやすきもの」(Tギロビッチ著)にも、医療への誤信について書かれてあり、僕の事例については信じやすき者の典型例として参考になるので、興味のある方は読んでみてほしい。
さらに、僕はゲームが好きなので最近VRゲームをやり始めたのだが、VR酔いがひどいことに気がついた。
最初は「せっかく買ったのだし」と気合で乗り越えようとしたのだが、だんだん脳が痺れてくるような初めての感覚と、全身から汗が吹き出るという謎の極限状態に陥り、その日は再起不能になってしまったので、VR酔いを気合で乗り切るのは不可能だと察した。
いずれの事例も、僕の精神レベルが足りなかったせいなのかもしれないが、いずれにせよ今の僕の精神力だけではどうにもならないことがあるという結論に達したわけだ。

大事にしたい考え方
まず大事なのは、精神力が有効に作用する範囲がどこまでなのか知っておくことだろう。
僕の場合は、精神力で乗り越えられると信じているものに○をつけるなら、
- 電車の乗り物酔い○
- 病気の克服△
- バスの乗り物酔い△
- VR酔い×
- 船酔い×
- スプーン曲げ×
- 夢を叶えること◎
こんな感じだ。
そうは言いながらも、精神は強く持ったり楽観的に考えたりして、精神の力を100パーセント信じること自体は有益だと思っている。
現実が思ったようになっていないとしても、楽観的な考えであることで心理的な負担が減ることは間違いない。
そして、夢を叶えることについても同じだ。
「自分の夢は必ず叶う」と信じて生きていれば、仮に夢が叶わずに死んでしまったとしても、ある意味幸せなのではないだろうか。
だから僕の場合は、×や△をつけたものに対しても、気持ちだけは必ず100パーセントで挑むべきだと思うし、そうしようと思っている。
悲観的に生きる意味など、ほとんどないのだ。
だからこう言う。
明日はきっとスプーンを曲げられるさ!と。