
昨日、LINEリサーチの記事で「高校生のなりたい職業」のアンケート結果を見た。
トップ3の結果はこんな感じだ。
JK1位 看護師(6.8%)
JK2位 教師・教員・大学教授(4.9%)
JK3位 国家公務員・地方公務員(4.6%)
(JKの隠れ1位 決まっていない・わからない(15.2%))
DK1位 教師・教員・大学教授(8.1%)
DK2位 国家公務員・地方公務員(7.7%)
DK3位 システムエンジニア・プログラマー(6.2%)
(DKの隠れ1位 決まっていない・わからない(21.9%))
次に「将来、働く会社/企業を選ぶときに、特に重視しそうなことは?」について、
JK1位から「人間関係/職場の雰囲気がいい」、「給料/ボーナスなどの待遇がいい」、「仕事の内容が働きがい/やりがいがある」
DK1位から「給料/ボーナスなどの待遇がいい」、「仕事の内容が、自分のやりたいこと/得意なことである」、「人間関係/職場の雰囲気がいい」
そりゃそうだよね、という感じである。
記事の最後に「高校生に10年後どんな自分になっていたいと思うか」のアンケート結果も。
JK1位から「安定した収入を得ていたい」、「好きな相手と恋愛・結婚していたい」、「仕事とプライベート、両方を充実させていたい」
DK1位から「趣味を楽しんでいたい」、「安定した収入を得ていたい」、「好きな相手と恋愛・結婚していたい」
だよね、という感じだ。
どれもこれも納得の結果だが、このアンケートから僕が感じることは、
- 未来のことは具体的には考えられていないこと
- 安定を求めていること
- 人との関係・仕事・生活のバランスを大事に考えているということ
だ。
この結果は、高校生に限らず、いつの世代においても通じることなのだと思う。
だが、皆気がついているように、環境はものすごいスピードで変わっている中で、未来のことを考えずにいていいのだろうか、ということで、
最近発売された『LIFE SHIFT2』(アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン著 池村千秋訳(東洋経済新報社))を読んで、改めて今、未来を考えることの大切さを痛感したので、自分の人生に当てはめて考えてみることにしたというのが、今回の記事の目的だ。
LIFE SHIFT2が描く未来と対応方法
過去の世代が選んだ人生の選択肢は、有効ではないので、「思考と行動を変えようとしない人は、様変わりした世界、大きく変貌を遂げつつある世界に対応する準備ができない可能性が高い」というのが、この本の軸メッセージだ。
昔は、3ステージの人生(学習、仕事、引退)を軸に人生を組み立てていたが、AI等テクノロジーの発展や長寿化により人生が長くなること等から、その軸が崩れてきているという。
軸が崩れたことにより、ステージが未知の世界になることから、個人および社会はこれから起きる変化に柔軟に対応しなければならない。
そのため、なるべく早いうちに、個人それぞれが自分の未来を主体的に考えて、自分の人生物語を設計して、行動し始める必要がある。
その動きに応じて社会は変わっていく。
※これは具体的には、AIが多くの仕事を奪うことになった場合、自分はどう生きていくのか、長寿化により、既存の制度(年金、医療等)では対応できなくなる等の理由で、高齢まで働き続けなければいけなくなった時に、スキルのない自分はどうなるのか等、自分の未来を考え、行動をする必要があるということだろう。
将来のことを考える際に、未来の時間を山の頂上(現在)から麓(未来)を見るような視点では、近視眼的になってしまい、将来を自分ゴトとして捉えられないので、違う視点で見ることが必要となるという。
その視点とは、鳥の目のような視点で人生全体を見ることで、現在の行動が未来に影響を及ぼすのだということをしっかりと踏まえて、選択肢を考えるというものだ。
そして、人間というのは元来、未来を見て希望と野心と夢を抱き、自らの潜在能力を開花させたいと考えるものであるから、ただ飯を食えて生き残ればいいというわけではないので、それを踏まえて設計すべきである。
ただし、生き方を変えるには1人の人間が変わるだけでは足りず、社会が変わっていかなければならない。
社会を変えるには、行政機関などに委ねていては、テクノロジー等の環境変化のスピードに対応できない。
だからこそ、一人一人が、今自分の人生物語を主体的に作り、勇気を出して生き方を探索していくことが重要なのだ。
僕の理解ではざっとこんなところだ。

公務員時代の僕に当てはめて考えてみる
『LIFE SHIFT2』のメッセージを、改めて公務員時代の僕の人生に適応させて検討してみることにした。
僕の結論は変わるだろうか。
※あなたも、自分に当てはめて考えてみると面白いと思うし、何歳であろうとやっておいたほうがいいと個人的には思う。
では始めよう。
まず、AIがどれくらい職を奪うのかはわからないが、少なくとも公務員は大丈夫だろう。
ただし、長寿化により、高齢まで働かなくてはならないということは確実に言えるだろう。
公務員を続けていたとすれば、民間で生かせるようなスキルを得ないまま、65歳で社会に放り出されることになる。
偉くなっていれば天下りするのかもしれないが、一握りの特権であることには違いなく、期待できない。
その未来に魅力もない。
安定を求め変化をどれだけ嫌がっていようと、ここで確実に、職場の変化に伴うアイデンティティの変化、場合によっては住環境の変化等、ライフシフトを経験することになる。
この年齢で、体力的にも精神的にもキツいに違いない。
その後、スキルのないままできる仕事にありつけたとして、80歳まで働くとすれば残り15年間、苦しいだけの状況に陥る可能性が高い。
また、自分にとって苦痛なことを続けていれば、健康を害している可能性もある。
過度なストレスは、健康状態に悪影響がある。
しかも、人間の脳は健康な状態ではじめて学習が可能になり、強い不安やストレス下では、学習の能力が大きく減退するという。
嫌なことをしていれば、新たなスキルをつけることも難しくなるということは、65歳までライフシフトする準備ができない可能性があるということだ。
以上を踏まえれば、40歳の動けるうちにライフシフトを試みて、紆余曲折はあるにしてもやりたいことを追求しながら、残り40年の労働期間を生きがいを持って過ごせるよう準備した方がいい。
しかも、動くのは遅ければ死活問題になるが、早ければ早い方が複利のように利益は積み上がるので恩恵をより多く享受できる。
何れにせよ転身を考えているなら、動かない間の幸福度の低下や時間がもったいない。
「よし!ヒップホップのビートメイカーになろう!」
結論は、今考えても変わらなかった。
改めて自信を持って、未知の世界へ突入できる。
そう感じた。

食っていけるかどうかの他に大切なこと
『LIFE SHIFT2』には、こんな考え方が示されていた。
それは「人間としての可能性の開花の達成度」という考えだ。
先ほど、「人間というのは元来、未来を見て希望と野心と夢を抱き、自らの潜在能力を開花させたいと考える」という話を紹介したが、それに関係する話た。
その達成度は、
- 物語(自分の人生のストーリーを紡ぎ歩むこと)
- 探索(学習と変身を重ねて、人生で避けて通れない移行プロセスを成功させること)
- 関係(深い絆を育み、有意義な人間関係を構築して維持すること)
で測ることとして、この本では定義している。
これらの要素を、充実させることで、よりよい人生を歩むことができるのではないかと、僕は思っていて、自分の人生を考える上で、良い指標になるのではないかと思う。
この達成度を過去の「3ステージの人生」で考えてみると、日本の幸福度が低い理由が見えてくる。
「3ステージの人生」における「物語」は誰かが作ったレールの上を歩いているようだし、「探索」は、ブルシット・ジョブに囲まれ、多忙で、強いストレスを感じる環境では困難だし、「関係」は仕事の比重が多すぎて、家族とすら十分に絆を築くことが難しくなっている、というのが多くの日本人が置かれている状況ではないだろうか。
別の視点で見ると、「人生の自由度が低すぎる」ということに気がつく。
自由度=幸福度
この二つは相関していると僕は思う。
人類が歴史を通じて自由を求めてきたことからも明らかなのではないだろうか。
とすれば、自分の人生のストーリーを主体的に考えていくことで幸福度が上がるのであれば、皆がそのように行動した方が、世の中が良くなるように思えてくる。
日本の世界幸福度ランキングが低いというのは、すでに知られていると思うが、幸福度の低さと生産性の低さも関係していると思う。
誰かが決めた人生を歩みながら、やりたくないことを嫌々やっていれば、生産性は低くなるに決まっているからだ。
ラッパーのB.I.Gも言っている。
「誰かが決めたテメーには用はねぇ」と。(『所長の還暦に感激』(N.C.F)より)
0.1歩でもいいから踏み出そう
だからこそ、もしもやりたいことがあって転身を考えているなら、勇気を出して早く動き始めることが大切だ。
というのも、一人一人の行動が、社会全体の利益にもつながるのだと、僕は信じているからだ。
僕は、公務員というは、泥だらけの道を竹馬で歩いているようなものだと思っている。(何かの本で読んだ表現だが、タイトルを忘れてしまった。)
「AIで仕事が奪われるかもしれない。」という危機感は、公務員には無縁だ。
一方で民間の人たちは、この脅威だけにとどまらず、リストラ等、様々な不安の中で生活している。
でも、公務員だった頃の僕は、法律で守られている以上、AIに仕事を奪われることもないし、収入がなくなることがないと高を括り、どこか世の中の動きに対して他人事のように感じていた。
しかも、世の中の変化についていこうとすらしていなかった。
地に足をつけて生きていなかったのだ。
もしも僕が、公務員のまま『LIFE SHIFT2』の未来が訪れるなら、地に足をつけた瞬間に、足を滑らせて転んでいたかもしれない。
僕の好きな本で小坂井敏晶さんの『答えのない世界を生きる』の中にこんな話がある。
「あの世で坂本龍馬に会って、「おぬし、娑婆では何をしてきた」と尋ねられた時に、「へい、国家公務員を少々」とは、とてもじゃないが恥ずかしくて答えられない」
『答えのない世界を生きる』小坂井敏晶著(祥伝社)
という話から、人生において成功するために、好きなことをやるべきだと説いているのだが、この話に僕は膝を打つ思いがした。
そもそも、僕にとっては『LIFE SHIFT2』の世界が訪れようと訪れまいと関係ないのだ。
僕の生き方はうまくいくかどうかはわからないが、誰かの参考にはなるのではないかと思っている。
自分の人生を歩き始めた実感、地に足をつけて生活を始めた実感があり、この経過自体に幸せを感じているのは確かだ。
だからこそ、同じように、自分の人生を歩き始めようとしている人を応援したいと思っている。
読者の方は、是非、一度でいいので未来のことを主体的に考えてみてほしいと思う。