
2021年9月25日の土曜プレミアムで公開された『鬼滅の刃無限列車編』を見た。
去年のブーム時から気になっていた映画なのでワクワクしながら観てみたが、期待にたがわぬ良作だった。
この映画は簡単に説明すると、
主人公である煉獄杏寿郎(以下「煉獄さん」という。)が何度もいいことを言う映画
ということになるのだが、僕たちの人生においても役に立つ教えが散りばめられていると感じた。
煉獄さんの教え
煉獄さんの教えや考えの中で、個人的に人生の指針としても役に立つなと思ったのは、
- 天から賜りし力で人を傷つけることや私腹を肥やすことはだめ
- 弱き人を助けることは強く生まれた者の責務
- 自分の心のまま正しいと思う道を進め
- 身体を大切にせよ
- 己の弱さや不甲斐なさにどんなに打ちのめされようと心を燃やせ
一つ目や二つ目の教えには、現在のエリート層が、生まれた環境や才能を得たこと自体の運の良さを棚に置いて、成功は自分の努力のおかげなのだから富や名声という正当な報いを得て当然である、という傲慢な態度に見られる能力主義への戒め、それに伴う格差社会への疑問等のメッセージを感じる。
三つ目から五つ目については、自分の本来の心を見失っている人々が多い現代で、それでも自分がどう生きるかが大切であると説く煉獄さんの芯の強さに、改めて触発された。
以上は自分に都合の良い解釈に過ぎないのかもしれないが、僕にとっては煉獄さんの教え(一つ目と二つ目は煉獄さんの母の教えなのだが)は、人生において役に立つものであると確信している。
だが、まさかあのような大惨事において煉獄さんの教えが役に立つとは、しかも、実際に役に立ったのはこれら五つの教えではないとは、その時の僕は想像すらしていなかったのである。

大惨事
2021年9月30日、太陽が沈みかけた頃、僕は夕食の準備に取り掛かっていた。
隣接した部屋で妻は洗濯、息子はテレビを見ていた。
ごく普通の1日だった。
僕の得意料理である「買ったばかりでシャキシャキなキャベツの自家製あったかスープ」を作るため、刃研ぎたての包丁でキャベツを切ろうとしていた。
しかし、キャベツが新鮮すぎてなかなか刃が通らないアンド抜けない状況に追い込まれた。
まるで上弦の参の鬼、猗窩座(あかざ)の首に煉獄さんの刃が通らなかった状況と同じである。
映画では、煉獄さんは信念に従い刃を押し通し鬼の首を断ち切ろうとしていたが、僕はキャベツから刃を抜こうとした。
今思えば、それが間違いだったのかもしれない。
力任せに刃を抜こうと力を入れた次の瞬間。
嫌な感覚が左手の薬指中ほどの部分に感じた。
なんと、キャベツを切る予定が、自らの薬指の肉を1.5cmほど切ってしまっていたのである(削ぎ落としてはおらず、皮と少しの肉で繋がっている状態)。
キャベツとの戦いで人生で最大級の切り傷を負った僕は、指から流れでる絵の具のような血にショックを受け、気が動転していた。
どれくらい気が動転していたかというと、止血をするでもなく「これはやばい」と言いながら水道水で血を流すという謎の行動をするほどである。
すぐに洗濯をしていた妻が駆け寄り、手際良く止血を開始したのだが、僕は血圧が下がり吐き気をもよおし、顔が青ざめていくだけだった。
その様子を見た息子が「深呼吸しなよ!」と叫んだ。
その声を聞き僕が即座に思い浮かべたのは、煉獄さんの教えだった。
(後から聞いてみると、僕を落ち着かせるためだけに深呼吸を提案してくれたそうなのだが、僕はそれを聞いて煉獄さんの教えを思い浮かべていた。)
それは、炭治郎というキャラクターが腹部から出血しているシーンの一コマである。
煉獄さんは、腹から出血している炭治郎の止血をするために、
呼吸をして、破れている血管に意識を集中する技法
を教え、見事止血に成功したというあのシーンである。
今思えば明らかに人間離れした技法なのだが、その時の僕はなぜかできると信じており、いっさいの疑いがなかった。
というわけで僕は早速、深呼吸というか水の呼吸を開始した。
そのおかげだろうか。
なんと、呼吸をし始めてから数分で血が止まったのである!

思いがけないことが役に立つ
まさか映画の教えが、こんな状況で役立つとは思ってもいなかったのだが、人生というのは何がどこで役立つのかわからないものであるなあと、つくづく感じた出来事であった。
実際は、僕の呼吸で血が止まったわけではないだろうが(いや、もしかしたらそういうこともあるのかもしれないが)、あの時は「大丈夫だ」という希望を持つことで明らかに自分を落ち着かせることにつながり、大事に至ることはなかった。
自分にとって意味のある出来事だと思っていたことだけではなく、どう考えても役に立たないと思っていることだったとしても、後から振り返れば必要なことだったと理解したことはないだろうか。
また、どんなに辛い時期があっても、後から振り返れば自分にとって糧になっていたと気づくこともあるだろう。
人生というのは、そんなものなのではないかと思う。
僕が今こうして、あまり意味のないブログを書き続けているのも、いつか誰かの何かの役には立つのかもしれないという希望があるから、今日も書き続けているのだ。
おまけ
呼吸というのはめちゃくちゃ有用らしく、呼吸法を使えば実際に痛みを和らげたり、パニックを解消したりできるらしい。
ついでなので、僕が緊張した時などに実践している心身を落ち着かせる呼吸法を紹介して、記事を締めくくりたいと思う。
- 4秒間、鼻から息を吸う
- 4秒間、息を止める
- 4秒以上かけて、ゆっくり口から息を吐く
- 心臓の鼓動が落ち着くまで繰り返す
(『THINK LIKE A MONK自分に集中する技術』(ジェイ・シェティ)東洋経済新報社より)
ちなみに、僕が奇跡の止血をした時に実践していた呼吸もこれだ。